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「かあさま、にいさまはどこ?」

そう聞いた時、母はなんて言ったっけ。




母の顔すらもう覚えていない。端正な顔立ちだったとは思う。それはあの人の、最後まで守るであろう牙城だから。

あの人に関して覚えているのは、あの傷一つない白い指先、兄への賛嘆の声、それともうひとつ。


「お前には無理ね」


あのときはなんて感じたっけ、何にも感じなかったっけ。
今になって疼いてるだけなのか。


「にいさま、」
名を呼んで応えてくれるのは兄だけだった。
「どうしたんだい、アギ。怖い夢でも見た?」
兄は、兄だけは眠るまでそばにいてくれた。


「…俺はあんたを許さない」
誰に向かって言ったっけ、母だったか、兄だったか。父の存在はあやふや過ぎる。
生まれつきエンドブレイカーの能力を示さない俺には何の興味もなかったようだ。





生まれなければよかったのに。
これは誰のセリフだっけ。

俺かな。かあさまかな。にいさまかな。
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